タイジ、ソロモン、ボタフォゴ、ブルース...

 Club Kingの桑原茂一氏が渋谷FMで始めた、radio dictionary、反戦ラジオへの出演をきっかけに仲良くなったのがシアター・ブルックのタイジ君。最初は彼をジョー・ストラマーのライヴに誘って、そのまま朝の3時ぐらいまで中目黒にあるエチオピア料理の店、クイーン・シバで飲んでしまったことがあって、それ以来、彼の演奏を見に行くようになったんだけど、最初が年末の新宿ロフト。彼がシアター・ブルックとは別にやっているプロジェクトだった。

 といっても、これは彼がギターをぎんぎんに演奏して、バックが、簡単に言ってしまえば、機械で音を出しているというもの。まぁ、今風のものなんだろうけど、これはあまり面白いとは思わなかった。なにせ、テクノとかドラムンベースとか... ああいったものに、全然おもしろみを感じていないので、こうなるんだろうなと思う。

タイジ  でも、そんな音にのって気持ちよさそうに演奏しているタイジのギターは好きなんですな。おそらく、好きな音楽の接点があるからなんだろうと思う。といっても、ロックとか、そういった音楽が好きだったらたいていは通過しているだろう、ジミ・ヘンドリックスとか、スライ&ザ・ファミリーストーンとか、そのあたりなんだけど。(笑)

 でも、なによりも好きなのは、タイジという人間なんだろうなと思う。互いにうそをつけない馬鹿正直者(と、勝手に思いこんでいるんですが)だから、まぁ、遠慮しないでまっすぐに話をしてしまうわけで... それでむかっとすることがあってもいいんじゃないかと思ってるからな。

タイジ  そういった個人の関係だけではなく、今回のアフガン空爆に関しても、彼と自分のとった行動は同じようなものじゃなかったかと思っている。というか、彼の方が自分の世界でもっとポジティヴに動いているんだけどね。自分のライヴで募金を集めてそれを寄付したり、9日にも新宿ロフトで開かれた反戦キャンペーン・ライヴに登場してもいる。

 これは、その時に撮影した写真で、いつも渋谷FMで彼が生ギター1本で演奏してくれている、アメリカで放送禁止にされたといリストの中から数曲を彼が歌ってくれたのがこの日。確か午前3時ぐらいの登場だったと思うけど、U2の『サンデー・ブラディ・サンデー』(正確なタイトルは覚えてはいないんですが... 申し訳ない)やディランの『ヘヴンズ・ドア』とか... なんかしら、ラジオでやっているときよりも、全然迫力があって、その演奏と歌に吸い込まれるような気分になったもんです。

 そういえば、Smashing Magに投稿してくれた人が三宅伸治&忌野清志郎のライヴで、彼らが『鈴木宗男どころの話じゃない』なんぞという発言をしていたんだとか。その通りでしょうね。どこかでアフガンのことなんて全部終わってしまって『平和がやってきた』なんて思っている馬鹿がいっぱいいるんだろうけど、あの間抜けな政治家(もちろん、彼ひとりじゃなくて、自民党なんて全部そうだろうし、民主党だって同じ穴の狢でしょ。それは他の政党だって同じことですよ)の、あまりにお粗末な行動のおかげでメディアの焦点がそっちに移行してしまったような気がするのは僕だけだろうか。

 当然ながら、端からメディアなんて信用していないので、そんなことはどうでもいいんだけど、彼の証人喚問が行われた日だっけかに2500発の爆弾が落とされ、アルカイダ兵の遺体が散乱していたというニュースがちらりと流れたような気がする。兵士たちがどんな思いでその爆弾の雨を迎えていたんだろうか... これは想像に過ぎないけど、おそらく洞窟の奥で恐怖に震えながら、そして、神に祈りながら、小便をちびりながら、死を待つしかなかった人たちがあの場所にいたような気がする。はたして彼らは本当に殺人鬼のような人間なんだろうか? 僕には、ブッシュこそが、そして、それを支えているアメリカこそが殺人鬼のように思えるんだが、どんなものだろう。

 そういえば、その殺人鬼、ブッシュが来日したとき、彼を迎えたミュージシャンの宇多田光さんに失望しました。あなたのCDを聞いたこともなければ、買おうと思ったこともないけど、ニコニコしながら、あなたがブッシュに挨拶している光景をテレビのニュースを見て、背筋がぞっとしたというか.... 数百万枚のアルバムを売ったあなたがあの殺戮の張本人を暖かく迎えるという行為は、明らかに意図的に政治的です。あなたが戦争を支持している人と知りませんでした。なんでもご自分のホームページで、そうではないようなニュアンスのことを語っていたとか、ワイドショーで耳にしたことがあるけど、なんでそんなことを言いながらブッシュを笑顔で迎えることができるの? 自分のやっていることを全然理解していないような気がします。あなたが若いから? 無知だから? でも、僕が10代の頃でも、あんなことはできなかったと思いますよ。

Banda Bassotti  そんな「戦争を支持している」ミュージシャンがいる一方で、それとは全く逆の動きをストレートにしている人たちがいる。それはタイジであったり、坂本龍一であったり、忌野清志郎であったりするんだけど、イタリアの僕の仲間たちも同じだ。4月2日には再びイタリアの土を踏んでバンダ・バソッティのツアーを取材することになっているんだが、彼らのレーベル、グリダロ・フォルテの中心人物で、バンダ・バソッティの演奏しないメンバーでもあるダヴィデがバスクのフェルミンと一緒にパレスティナに300人の仲間たちと飛ぶんだそうな。イスラエルのパレスティナに対する国家による「テロ」行為に対して直接行動で抗議するんだそうな。さすがです。

 ちなみに、これはバンダ・バソッティの4月ツアー用フライヤーで、これを取材しに行くわけだ。すでにバンダ・バソッティの新しいアルバムのCD-Rコピーが手元に届いているんだが、なんでもジャケットとか、インナーとかに僕の撮影した写真をふんだんに使っているんだそうな。まぁ、実物を見ることなく物事が進行してしまっているのって、ちょっと寂しいけど、それほどまでに写真を気に入ってくれたのがなにより嬉しい。来週あたりにはこのジャケットと一緒に本ちゃんのCDが届くはずだから、多いに楽しみだ。

Botafogo  ちなみに、このツアーにブラフマンをブッキングしたのが友人で、彼が3月に企画したのがアルゼンチン人のブルース・アーティスト、ミゲル・ボタフォゴの日本ツアー。目黒のブルーズ・アレーとかでライヴを見に行ったんだけど、ライヴの会場以外で彼と仲良くなっているような気がする。前回の来日の時にも、やはり目黒の同じ店で見ていたんだが、あの時はそんなに話はしなかったからな。

 でも、今回は中目黒のソロモンの店で2回ほど会って、いろんなブルース談義をしたもんだ。といっても、自分自身そんなにブルースに詳しいわけではなく、好きなアルバムなんぞを流しながら、「いいねぇ、ブルースって」なんてクダ巻いていただけなんだけどね。

 というので、その時聞いていたのがこの2枚のアルバム。両方とも17歳の時に心斎橋にあった坂根楽器というレコード屋さんで吉村さんという店員(今では確か、吉村レコードとかいう店をやっていると思うんだけど)に勧めてもらって買ったように思う。

Otis SpanBig Mama Thornton  当然ながら、アナログしか持っていなくて、その2枚を1枚のCDに焼いてクイーンシバで聞いたという次第。実をいうと、このアルバムを初めて聞いた頃は、これこそがブルースだなぁ... いいなぁ... なんて思っていただけなんだけど、クレジットをチェックしたら、バックをつとめているのは、結局、マディ・ウォータースのバンドの連中で、ほとんどこの2枚のメンバーが重なっているというのが面白かった。そうかぁ、やっぱりマディ・ウォータースなんだぁと、つくづく思いましたな。

 ちなみに、このジャケットはアナログをスキャンしたんだけど、レコード盤の形が付いているのが... 時間を感じさせるでしょ? だって、これ買ったの30年ぐらい昔だもん。それなのに、今、聞いても全然色あせないどころか、めちゃくちゃいいというのがすごいよね。名作っていうのはこういうものですな。

Mississippi John Hurt  で、面白かったのが、この時話題になったミシシッピ・ジョン・ハートのこと。実をいえば、その昔、ギターを弾き始めたとき、徹底的に惚れ込んだ、自分にとってのギター・ヒーローで、同時に、ぼろぼろになるほど感動した大好きなアーティストがこの人。よくいうじゃないですか、レコードの溝がすり減るぐらいまで聞いたって。自分にとって、ミシシッピ・ジョン・ハートこそが愛してやまない宝物のような存在なんですよ。

 特に、このアルバムです。これは彼が亡くなる前に録音された最後の作品なんですけど、これは泣けるよ。名曲『グッドナイト・アイリーン』の彼のヴァージョンなんてどうしようもない気持ちにさせてくれるし、1曲録音するたびに息づかいまで荒くしてしまったお年寄りだったんだけど、そこまでやって録音したこの作品は聞く人をどこまでも優しくしてくれるような感じがします。

 と、その話をボタフォゴにしたら、『実は、僕のヒーローもジョンハートなんだよ』と、お互いにやっとしたというか... 挙げ句の果てには(プロで演奏している)彼が持ってきていたギターを、「ちょっとかしてくれる?」と弾き始めたり... もちろん、曲はジョン・ハートのもの。そうしたら、彼も喜んで、そんな話をいっぱいしましたわ。

 このアルバムが今の人たちにどんな響きを持つのか全然想像できないけど、ホント、これはいいよ。もしチャンスがあったら、聞いてちょうだいね。

SolomonSolomon

 さてさて、その話で盛り上がったソロモンのお店、クイーンシバで演奏しているのがかつてメイシオ・パーカーのバンド、それに、JBsでベースを弾いていたというジェリー・プレストン。といっても、まぁ、お客さん商売という感じで、彼の得意とするベースを楽しめるわけでもなく... まぁ、いわゆるヒット曲を歌っているんですが、それはそれで生活がかかっているわけだから、悪いとは思わないんだけど、なんかもったいないわけですよ。

 で、彼といつだっけかに話をして、日本人のミュージシャンを紹介するから、もっと面白いことをしようよ... といったのをきっかけに、毎週日曜日にジャム・セッションをしようということになったわけです。まずは声をかけたのが、昔からの仲良しで、モンド・グロッソというバンドでギターを弾いていたグロウ君。彼がやってきてくれて、な〜んにも決めていないジャム・セッションが実現して、その翌週にはKEMURIのコバケンがやってきてくれて... これも嬉しかった。

solomon  その翌週にもコバケンが遊びに来てくれて、やっぱりモンド・グロッソのサックスをやっていた(そして、今は自分のバンド、スリープ・ウォーカーをやっている)仲間のサックス奏者、マサヤンが遊びに来てくれたり... この時、マサヤンが持っていたのはソプラノみたいなもので、1932年に作られたという楽器。コバケンもそれを吹かされたり... コバケンのテナーをまさやんが吹いたり... めちゃくちゃ面白かったよ。

 さらには、たまたま近所にいたという忌野清志郎さんが遊びに来て... マサヤンのサックスを演奏したり、のってきて歌い出したり... いやぁ、楽しかった。誰もお金儲けのために演奏しているわけでもなく、お客さんもたまたま店にいた人だったりするんだけど、ほとんどの場合仲間だけで... ただ音楽が好きだから、一緒に遊ぼうよ、そして、仲間になろうよって感じなのがこのジャム・セッション。もし、このホームページを見ていて、腕に自信があったら、遊びに来てみれば?

 ちなみに今週は渋谷FMを終わってから、タイジを連れて行ったんだけど、なんとこの日はジェリーがさぼったというか、他にお金のはいる仕事があってこられなかったというか... そんな感じでタイジとジェリーのセッションは見られなかったのが残念だけどね。いずれにせよ、これは毎週火曜日にやるので、良かったら遊びに来てちょうだい。

 ということで、もう時間も遅くなってしまったので、更新はこれぐらいにして、明日、またがんばって書こう。なにせ、このところ、オゾマトリの来日とか、エディ・リーダーの来日とか、知っているアーティストと過ごした時間もあるので、そのあたりのことも伝えたいから、まだまだ書かなければいけないことがあるのよ。

 ということで、じゃ、また。

written in Tokyo on the 22nd March, 2002.

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