VARIOUS ARTISTS-One Love

 なぜボブ・マーリーなのか… あるいは、なぜ英国のジャズ・ミュージシャンやジャズの影響を受けたアーティストたちがこのプロジェクトの主役なのか… 実を言えば、答えはその問いかけにある。

 おそらく、ボブ・マーリーを語る時、必ず登場するのが『レゲエ界のキング』や『第三世界初の大スター』といったフレーズの数々。あるいは、なかには彼の政治的な影響力の大きさを指摘して、あたかも政治運動家のような存在であったと語る人もいるかもしれない。

 もちろん、それを否定するつもりはない。が、その全てを飲み込んだボブ・マーリーの音楽が、ジャマイカはキングストンのゲットーから、海を越え、国境を越えて世界に広がっていったのか… その理由は、『レゲエ』や『政治性』という看板を遥かに越えた、彼のミュージシャンとしての資質にある。なによりも彼は卓越した作曲家であり、作詞家であり、アーティストだったのだ。それを証明するのが、死後15年にもなろうとするのに、全く色褪せることなく輝きを増している名曲の数々。今回のプロジェクトはボブ・マーリーの音楽そのものが抱えていたそんな魅力をより鮮明に打ち出すことにあった。

 一方、ここで主役となっているのは、UKジャズ・シーンの中核で活躍するミュージシャンたち。多くはジャマイカ系移民の2世であり、おそらく、ボブ・マーリーやレゲエの存在がなければ楽器を手にすることもなかったかもしれない人々だ。ストレートなジャズを演奏する人もいれば、ファンクやソウル的な色彩を放つ作品を残しているアーティストもいる。が、多分にジャズを意識している彼らが、その本場、アメリカ人ジャズ・ミュージシャンと全く違ったユニークな音楽や演奏を繰り広げているのはなぜか? おそらく、それは彼らのなかでボブ・マーリーやレゲエが血となり、肉となっているからだろう。

 そんな彼らが真正面からその事実に対峙して、ボブ・マーリーの作品を独自のスタイルに昇華した演奏を集めたものだ。原曲とはまるで違ったニュアンスを持つものもあれば、スタイルも様々。が、いずれにせよ、このプロジェクトを通じて証明できたのは彼の作品が汲めどもつきない魅力に溢れていることだっろう。

 このアルバムは、偉大なるボブ・マーリーへのトリビュートであると同時に、彼抜きには考えられないほどの影響を受けているUKジャズ・シーンの鍵を握るミュージシャンたちのショーケースでもある。

1995年11月執筆

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