Gaz Selects R&B Classics-Whiskey, Women & Wine

 掃いて捨てるほどのクラブが生まれては消えるロンドンで、95年6月に15周年を迎えるのが『ギャズズ・ロッキン・プルーズ』。おそらく、若い世代にはなじみが薄いだろうが、ローリング・ストーンズの生みの親、アレクシス・コーナーと共にUKブルーズ界のドンと呼ばれるジョン・メイオールの息子、ギャズ・メイオールが運営するクラブだ。ここで流されているのはスカ、ロックステディにレゲエからブルーズにジャンプやR&B、そしてカントリィやヒルビリィにロカビリィー… おそらく、世間では忘れ去られたような古典音楽。しかも、テクノロジィの進歩で始まった総デジタル化に反逆するように、彼が回しているのはビチビチのノイズ混じりのアナログ盤だ。実際、ここで使われるレコードのほとんどはコレクターなら喉から手が出そうなほどのオリジナルのドーナツ盤。いわば、完全に時代に逆行しているのだ。

 といっても、ただ昔を懐かしむだけのレトロでもない。例えば、ギャズが85年に始めたレーペル「ギャズズ・ロッキン・レコーズ」。ここから初めて発表したのは、スカのゴッドファーザー、ローレル・エイトキンをフィーチュアしたポテト5のシングルだ。これは60年代初頭のオーセンティックなスカを吸収した現代のバンドであり、その他にも彼自身が結成して大人気を獲得しているトロージャンズや東京をべースにしたスカ・フレイムスの作品など、数多くの新バンドがここから登場している。言葉を換えれば、彼がこだわっているのは単に昔の音楽ではなく、そこにしかなかったクオリティなのだ。

 そのギャズがスカ同様に愛してやまないのがR&B。ライナーにも書かれているようにそれこそがスカの原型であり、それを下にジャマイカのジャズ・ミュージシャンが完成させたのがスカだと筆者は考えている。そんな意味で言えば、R&Bファンだけではなく、スカ・ファンにも楽しんでもらいたいのがこのアルバムだ。

 さて、『ウィスキー、ウィメン・アンド・ワイン』のコンセブトの下に、彼が抱える膨大なシングル・コレクションから厳選されて作られたのがこのコンピレイション。なかにはレコード会社がマスター・テープを紛失し、彼らでさえ入手不能となっている作品も含まれている。実際、ここに収録されている30曲のうち3曲は彼のシングル盤からのマスター起こし。若干サウンドに問題があるかもしれないが、ワイルドな『ギャズズ・ロッキン・ブルーズ』の雰囲気を再現するには必要不可欠な曲でもある。大いに楽しんでもらいたいものだ。

 また、選曲やライナー同様、ジャケット・デザインを手がけているのもギャズ本人。加えて、「日本から参考資料に送られてきたR&Bのアルバムに掲載されている歌詞が間違いだらけだ」と憤慨して、全曲のワーディングも本人が担当している。

 おそらく、ギャズはR&Bやブルーズの研究家としても高く評価されるべきだろう。同時に、彼がそれを学問や研究対象としてではなく、時間を越えた魅力を持つ音楽として現在に蘇らせていることも評価すべきだ。そのひとつがこのアルバム。なにはともあれ、ヴォリュームをめいっぱい上げて楽しんでもらえれば幸いだ。

1995年3月4日執筆

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