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「すんごいね、ロンドンに行ってきたんだけどさぁ、もうどこもかしこも完全にサイケ。流行ってるねぇ、マイッちゃったよ。」と言う人がいると思えば、「どこでもかかってんのはブル−・アイド・ソウルでさぁ、これが絶対に一番。」あるいは 「今はなんと言ってもジャズだって、これっきゃないよ。えっ?まだあのバンド聴いてないの?そりゃないよ。」と、雑誌や業界人が大騒ぎ。ってな具合に次々と新しい情報を提供してくれるのがロンドンのミュ−ジック・シ−ンだ。 っても、そんなのを鵜飲みにしたり、それが全てだなんて思うってのはちとヤバイ。特に雑誌やレコ−ド会社の宣伝文句に出てくるフレ−ズ、「今、ロンドンじゃ・・・」なんてのあるじゃない。こ−ゆ−のは絶対信用できないね。だってそうじゃない、そ−ゆ−世界の人ってある種流行や雰囲気を作るのが仕事なわけでしょ?みんなの好奇心をくすぐるためにいつも新してセンセ−ショナルな情報を提供しなきゃならないし、刺激的なキャッチ・フレ−ズも必要だ。レコ−ド会社はマスコミのネタにしてもらおうってんで、ちょっとヒットが出るとム−ヴメントやファッションを作り上げる。そうすりゃ、「うん、これがイマイんだ。」ってレコ−ド買ってくれる人も出てくるかもしんない。 そんなのもう充分わかってんだよね。ところが、実際この街に足を踏み込んでみるじゃない。すると、そんな言葉のひとつやふたつ出してみたくなるんだよね。なんてぇのか、どんな音楽もみんなすんごくパワフルで、そのパワ−に圧倒されちゃうってのか・・・。特にこの2〜3年新しい音楽やファッションの震源地になっているナイトクラブ。こんな場所に入り込むと、もうダメだね。音楽そのものよりも来てる人たちの熱気にまず腰を抜かしちゃうもんね。例えばゴシップスって店。月曜日はドクタ−という変人DJが担当するサイケの日、名付けて "アリス・イン・ワンダ−ランド"。ピンク・フロイドなんか流しながら、ドクタ−がギンギンにエコ−かけてト−ク・オ−ヴァ。もちろん、いつも満杯で、こんな場所に迷い込んだら、「ロンドンはサイケで大爆発。」なんて台詞はいてしまいそうだもんね。 でも、ロンドンの若い人たちにとって唯一残された場所ってのがナイトクラブ。種類は千差万別で、サイケ、ゴシック・パンク、ジャズ、ラテン、アフロからレゲエとなんでも揃っている。だいたいロンドンの昼間ってのは退屈で、嫌な仕事でもあればいいけど、多くの若者は失業中だ。テレビ見るぐらいしかすることないし、酒を飲みにゆこうて思ってもパブは11時になると閉店。9〜10時頃にスタ−トするギグもメイジャ−になると高くて手が出ない。ってんで、安く飲めて、いい音楽があって踊れる場所を探し始める。それがナイトクラブや仲間内のパ−ティだ。そのせいかクラブの熱気にはすんごいものがあるし、 日本で想像するナイトクラブにあるスノッブな雰囲気はかけらもない。オ−プンする夜10時頃から明け方近い3〜4時のクロ−ジング・タイムまで、ロンドンの子供たちが唯一自由になれる時間帯がこれ。まるでシンデレラ物語だけど、彼らはここぞとばかり着飾り、踊りまくるのだ。 そんなナイトクラブで生まれてきたのがここんとこ脚光を浴びているちと風変わりなジャズ。いわゆる4ビ−トじゃないんだけど、かといってアメリカっぽいフュ−ジョンともちと違う。ラテンやソウルの要素が入り混じったダンサブルなサウンドで、必ずといっていいほどヴォ−カルがフィ−チュアされている。なんてぇのか、そ−ゆ−の、結局はイギリスっぽいって言うっきゃないのかもしんないだけど・・・。その好例がワ−キング・ウィ−クやシャ−ディ。なかでも最もナイトクラブ的な存在なのがこのアニマル・ナイトライフだ。
アニマル・ナイトライフの面々に会ったのはもうかれこれ1年前。彼らが初めてシングル("Mr.Solitaire")をヒット・チャ−トに放り込んだ頃だ。といっても、その時僕の関心は彼らの音楽よりも、彼らがCND(英国最大の反核運動体)集会で演奏したいとコンタクトを取ってきたこと。そして彼らが最も尊敬するア−ティストとして名を上げたセックス・ピストルズとマイルス・ディヴィスのアンバランスさ。なんと、そんなことがきっかけで彼らとインタヴュ−。その時の話をもとに、彼らを紹介してみたい。 グル−プが結成されたのは81年。ちょうどカルチャ−・クラブやスパンダ−・バレ−、ブル−ロンドなんてバンドがクラブから飛び出してきた頃。そんなバンドが演奏していたブリッツ、ル・ビ−ト・ル−トといったクラブで遊んでいた仲間が作ったのがアニマル・ナイトライフだった。 「みんなサ−ッカ−しかできないような奴ばっかだったんだけど、ちょうどパンクの後でさぁ。誰でもバンドなんて作れるって感じでスタ−トしたんだよね。ま、クラブでバンドを見てるだけじゃ退屈だってんで。(笑) 名前はそのものズバリ、僕らがナイトライフから生まれたからさ。アニマルってのはいつだっけか誰かんとこで本人の知らないのにパ−ティがあって・・・。家に帰ったらもうみんなケダモノみたいに大騒ぎ。ってんで、そんな僕らの雰囲気をグル−プ名にしたんだ。」 ギタ−のファビアンとサックス&キ−ボ−ドのビリィ・チャップマンがまず流動的なバンドを結成。ヴォ−カルのアンディ・ポラリス、ベ−スのレオナ−ド・チグノ−リ、ドラムスにポ−ル・ウォ−ラ−が入った時点で現在の骨格ができ上がったらしい。が、当時は9人編成の大所帯で、すでにその頃から全国ツア−。ロンドンにある有名なクラブ、ヘヴンでのライヴを超満員にしたという。これはレコ−ド・デビュ−もなく、ラジオでのオン・ エア−もなかった彼らの勲章だった。 そんな着実なライヴ活動が見を結びワム!を生んだインナ−ヴィジョン・レ−ベルと契約。シングル・デビュ−となった。その時にリリ−スしたのが、"Love Is Just The Great Pretender"。 実はこの曲、このアルバムにも収録されていて、彼らの最新シングルでもある。っても、それは新しく録音されたもので、タイトルに85が付けられているのはそのせいだ。ただし、その最新シングルの2枚組12インチ、それと同内容のカセット、 および12インチ・シングルには82年に録音されたオリジナルもオマケで収録されている。 「でも、バンドが9人。キ−プするのがたいへんだし、特にインナ−ヴィジョンと契約した後がね。昔はみんなでポスタ−作って、ただライヴやってるだけで一応食えてたのに、プロモ−ションとかなんとかで動きまわって全然金が入んないとか・・・。契約する時は演奏もできる大型バスを買ってやるとか、ウマイ話聞かされたけど、損するばっかだったよ。」 といった具合で、3枚のシングル("Love Is・・・""Mighty Hands Of Love""Native Boy")をリリ−スした後、このレ−ベルを離脱。9人いたバンドが現在の6人にシェイプ・アップされたのはこの時だった。そしてリハ−サルを重ね、アイランドと契約。初めて出したシングル、"Mr.Solitaire" のヒットが生まれた。尚、この時のレコ−ディングにスタイル・カウンシルのポ−ル・ウェラ−がヴァッキング・ヴォ−カルとして参加。このアルバムに収められているのはそれと同じヴァ−ジョンのようだ。これはサックスのビリィがスタイル・カウンシルの初来日時に一時的だったがメンバ−として参加していたことがきっかけのようだ。が、彼らの発言を聞くに、ポ−ル・ウェラ−との結び付きは音楽のみならず政治的なことにも関係しているらしい。 「僕らのトレ−ド・マ−ク、この赤い星はもちろん社会主義のこと。この国じゃぁ、上流階級の人間以外はみんなソ−シャリスト。間違いないもんね。(笑) サッチャ−は労働者階級を中流だって思い込まそうとしてるけど、そんなの信じるほど僕らバカじゃないよ。実際、初めて炭鉱労働者ストへチャリティやったのは僕らだし、動物解放運動も助けてるよ。」 と、元気がいいのはいいんだけど、そんなラディカルな姿勢と音楽のイメ−ジがどうも結び付かない。が、彼らに言わせると、 「第一に政治的な信条が音楽を規定するなんて思わない。それに誰でも言えんだよね、サッチャ−殺せとか、そ−ゆ−の。でも、それを音楽で言う必要ないじゃない。牛乳配達がソ−シャリストだからといって毎朝プロパガンダを配達するわけじゃないだろ。それにフランキ−みたいに政治やセクシュアリティをレコ−ド売る手段に使いたくはないよ。」 とのことだ。 彼らの音楽的ル−ツは幅広く、それはアルバム・クレジット、「シャングリラを助けてくれた人たちにサンクス」 にある通り。 「ル−ツはいろいろあるよ。楽器も演奏できなかった頃、アンディはペギ−・リ−なんて聴いてたし、その前はみんなピストルズやクラッシュ。でも、結局はソウルやファンク、ジャズ、そんなクラブ・ミュ−ジックかな。ってもなんでも聴いてるし、ヘヴィ・メタルは除いて。ただ、ジャンルやしきたりなんて関係ないね。例えば、僕らが初めて"Love Is The Great・・・" を録音した時、ジャズのことなんて全然知らんかったもんね。40〜50年代のレコ−ド聴いて面白かったからやっただけで。そんな意味で言ったら、あれはかなりパンキィなジャズだったんだろうな。」 そんな自由な発想が彼らの音楽を一層面白くしているようだ。好例は"Mr.Solitaire"の カセット・シングル (12インチ・シングルに匹敵するカセットのこと)ラストの曲、「Lazy Afternoon(Reworked)」。残念ながらアルバム未収録だが曲自体は4ビ−トのいわゆるジャズ。それにダブ処理していて聴き応え充分だ。 「作曲は全員でってのが原則。いわばデモクラティックってことなんだけど、だからかしら一曲一曲の仕上りがかなり違うんだよね。っても詞はアンディの担当で、ト−タリティはそのあたりから出てくるって気もするけど。」 という彼らのデビュ−・アルバムがこれだ。レコ−ディングはアメリカのフィラデルフィ アで行なわれたということだが、前述のように昔の録音も使用されているようだ。また、エンジニアのクレジットには最近スライ&ロビィとの仕事で活躍しているポ−ル・スマイクルの名が見えるが、手元に資料に詳しい記載がないので、どの曲を担当したのかはハッキリしない。 が、いずれにせよ、どの曲からも感じるのはロンドンにあるナイトクラブの雰囲気。それにジャケット写真のせいか、昔懐かしいハリウッド映画の世界を感じたりと、イ−ジ−な気分で聴くには最高のアルバムに仕上ってんじゃないのかな。ま、このレコ−ドのままだったら、音がクリア過ぎて本格的なロンドンのナイトクラブってわけにはいかないけどね。なんつ−か、パ−ティでもやってここにザワザワした雰囲気を加えると、それっぽくなるんじゃないかって思うんだけど、どんなもかしらん。 最後にアニマル・ナイトライフのディスコグラフィの紹介。というのも、他のブリティッシュ・ジャズ系ア−ティスト同様、12インチ・シングルでのミックスが実に面白い。それを聴くと聴かないじゃ大違いだもんね。というのでここへリスト・アップ。気になる人は是非聴いてほしいね。(7インチ・シングルははぶく。)
12IS 193 (12インチ・シングル) 1985年執筆 |