自衛隊に入ろう!?

「みんな行って、死んでしまえばいいんだ。あんなものは」

 PKOが話題になると、そんな言葉が飛びだしてくる。さすがはかつて『自衛隊に入ろう』という名曲を歌っていた人物。言うまでもなく、それは自衛隊を微笑ましく(!?)愚弄した曲なのだが、それにはこんな裏話もあるという。

「ある番組で一番最初にあれを歌った時、防衛庁から電話かかってきて・・・ あの歌欲しいって(笑)勘違いもいいところだよ。あいつらホントにバカだよね(笑)」

 あの当時、自衛隊の海外派遣など想像もできなかったろう。ところが、あれから20数年で憲法が見事に空洞化され、政治家のアホさ加減を選挙制度に責任転嫁した政治改悪が進行するのが93年。が、高田渡は今も変わっちゃいない。

「私はハッキリ言ってアカですから。政治集会なんて出たことないけど。だって、昔のベ平連なんて大嫌いだから。あんなえせインテリの連中なんてね。でも、なにより、歌っていればいいんですよ」

 その昔、彼が歌うキッカケになったウッディ・ガスリィも、実は同じような台詞を呟いている。

「ええ、私ゃアカですよ。通帳はずっと赤字続きでね・・・ 」

 そう言いながら歌い続けたウッディを話題にすると、今でも嬉々として彼のことを語りだす。

「うるさいですよ、ウッディに関しては。18歳の頃、彼に触発されて歌いだしたんだけど・・・ なんでも良かったんです。ただ自分を表現したかった。まぁ、ずっと貧乏で・・・ (笑)でも、歌やめるとかって、考えたことないね。歌う場がなくなったら、考えますよ。食わなきゃいけないから」

  同じ場所から出てきた連中が芸能人へ変身していく一方で、ガンとして真実の歌にこだわり続けてきた高田渡。その彼がなんと10年ぶりのアルバム発表だ。

「鈴木慶一君から『やろうよ』って話がきて、『じゃぁ、やるか』って感じでね。自分で言うのもなんだけど、いいのができたね。10年てぇのはどうでもいいけど、ずっと寝てたようなもんだから、そろそろ目を覚ますかって・・・ 若い奴等がしっかりしていないから。 お前らバカヤローってネ」

 結局、鈴木慶一に元はちみつぱいの仲間が中心になって録音が始まった。彼らは久々に生楽器で演奏し、高田渡は初めて打ち込みを使った1曲に挑戦。が、どれもが見事に渡色に染まっている。

「みんなで『せーの』でやって、歌ったのは2回だけ。そうやって職人が集まって創ったレコードだね。鈴木慶一も僕もこだわってた『生活の柄』も入れたし・・・ だって、あれを歌いだして25年だよ」

 某CMに使われている『ホントはみんな』や涙ものの『風』・・・ひとつひとつの言葉がズキズキと心に突き刺さり、涙腺をくすぐる。

「歌ってのは気持ちよくすぅ〜と出てくる・・・ まぁ、健康なウンコだな。気張っちゃいけないよ」

 そんな自然体の高田渡をそのままアルバム化。『渡』とは、実に正しいタイトルをつけたもんだ。

93年月刊宝島に掲載

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