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「あたしたちがやっているのはヘヴィー・メタルの影響だから」
と、前作の"ライヴ・マンチェスター & ダブリン"のMCで聞こえてきたのがこんな言葉だった。スペイン語で「ロドリゴとガブリエラ」という、このユニットの女性、ガブリエラがそれを語っているんだが、それこそがこの二人がたたき出す音楽の要だ。
なにやらジプシー・キングスがシンプルな構成になって... ところが、逆にサウンドがもっと肉厚にヘヴィーになって突然変異をしたかのような響きを持っているのが彼ら音楽。ポップさという点でいえば、カタロニアからアンダルシアあたりのフラメンコやルンバの要素も多分に抱えて、歌が中心になっているジプシー・キングの方が遙かに優位に立っているだろう。が、インストゥルメンタルだけで演奏されるこれが、メキシコから移り住んで活動の拠点となってしまったアイルランドで爆発的なヒットとなってしまったのだ。
その二人の歴史を垣間見ると、それぞれメキシコでメタル系のバンドをやっていたとか。これこそが、彼らの魅力の根幹なのだが、それでは未来を見いだせなくなった彼らはバンドをやめて、生ギター2台でバスキング(路上演奏)を始めるようになったというのがこのユニットの発端らしい。そして、デンマークやスペインなどを旅しながら行き着いたのがダブリンだったという。
ロドリゴが、フラメンコ界の奇才、マニタス・デ・プラタやパコ・デ・ルシアからジャズ界の奇才、アル・ディ・メオラばりのリード・ギターを弾いて、その隣でガブリエラが強烈なタッチを持ったリズムをギターからたたき出す。文字通りたたき出すのであって、弾いているのではない。五指を全て使ってまるで弦をはじくように叩き、同時に、まるでマジックのようにギターのボディをパーカッションとして使いながらリズムを刻むのだ。その迫力はそのままヘヴィーなロックであり、リズムは分厚いラテン。あのライヴ・アルバムでメタリカの「ワン」からデイヴ・ブルーベックの「テイク5」へと流れるカバーが収録されているんだが、これを聴いて感激しない人間がいるとしたら、その人の音楽的感性にかなりの疑問を持ってしまうだろうなと思う。
その彼らが大きくブレイクしたのが昨年のグラストンバリー・フェスティヴァルだった。彼らを生で体験した友人からしきりに「絶対に聞け!」とすすめられていたんだが、"ライヴ・マンチェスター & ダブリン"を注文しても「入荷できなかった」というレスが戻っていた。そうこうしているうちに新しい作品として登場したのが、彼らにとっての最新作、"ロドリコ・イ・ガブリエラ"。スタジオ録音アルバムとしては"Re-Foc"から4年目にして登場したセカンド・アルバムだ。
今回のアルバムにはDVDが付属していて、ここに収録されているのはライヴでの彼らの様子(これが、ド迫力ですごい)や、おそらく、どこかのテレビ局が制作したんだろう、彼らのドキュメンタリー。これを見ていると、どんなプロセスでアルバムが生まれたのか、そして、当初、彼らがプロデューサなど欲していなかったことがうかがい知れる。なにせ、"ライヴ・マンチェスター & ダブリン"を聴けば、プロデューサーなんぞ必要ないほどに完璧な音を作り出しているのだ。が、「ライヴ」の録音と「ライヴの感触を十二分に出せるスタジオ録音」とは明らかに違う。結果として、レディオヘッドやミューズで知られるジョン・レッキーがプロデューサーとして録音に加わり、それを見事に形にしたということだろう。録音に加わっているのは、ライヴと同じく、わずか二人。ゲストでヴァイオリンがわずかに入っているだけ。それでも、ライヴと同じようにヘヴィー・ロックばりの迫力が生み出されているのだ。
おそらく、なにも知らない人がこれを聴けば、バックにパーカッション奏者がいるに違いないと思うはずだ。それほどに重厚なリズムがギターのボディから生み出され、畳みかけるように迫ってくる。しかも、メロディラインも実に美しい。いい音楽の基本って、結局は素晴らしいメロディと歌なんだが、言葉による歌、ヴォーカルはなくとも、ギターがとてつもなく歌ってくれている。これが素晴らしいのだ。
収録されている曲で驚かされるのは、やはりメタリカのカバー「オライオン」とツェッペリンの「天国への階段」。なかには「サトリ」という曲が収録されていているんだが、当然ながら、これはフラワー・トラヴェリング・バンドのカバーではなく、オリジナル。華麗でヘヴィーでタフでラフと、そういったアコースティックでロックなラテン指向の傑作を聴きたいと思ったら、今のところ、これが一番のおすすめ。もし、音をチェックしたければ、iTMSでもhttp://www.myspace.com/でも、可能なので、チェックしみてればどうでしょ。といって、今、iTMSでサンプルを聞いたら、これをやったやつが彼らの音楽の魅力を全く理解していないことがわかった。エキゾチックでエレガントな部分しか聞かせようとしていない。アホです。
ちなみに、このアルバム、アイルランドではチャートのトップになってしまったとか。素晴らしい。また、DVDにはガブリエラによるギター・スタイルの解説も付いている。ミュージシャンの方は、このあたりをチェックしてみると面白いかもしれない。
2006年5月25日記す。
reviewed by hanasan
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