|
|
|
出たぁ、ついに歴史的名盤復活だぁ!
こんなものがあるとは思わないが、真性スカ・レゲエ・ファンというか、超オーセンティック・ディープ・ルーツ・レゲエ派(ほんまかい?)にとって、待ちに待ったCD化がこの作品。伝説のトロンボーン奏者、リコ・ロドリゲスの最高傑作、そして、インストゥルメンタル・レゲエというか、スカというか... その世界でも、これ以上ないだろうと言うほどの傑作がやっとまともな形で日の目を見ることになった。
なにはともあれ、これを聴かなければレゲエもなんもあったもんじゃないといいきってしまえるほどの名作なんだが、アルバムの幕開けからそれをひしひしと感じることができるのだ。初っぱなのピアノの音に引きずるベースとパーカッションが聞こえてくると、そこにギターとドラムがたたき出す静かな、それでも重たいリズムが絡んでゆく。そして、それに絡むのが、さらに輪をかけて重厚なホーンの大きな波。それがゆっくりと、でも、大きなうねりを持って被さってくる... という感じで始まるのが"This Day"。もう、この1曲でド〜ンとディープなルーツ・レゲエの世界に投げ込まれてしまうのだ。
その重たいうねりはアルバム巻頭から終わるまで貫いているのだが、この時代のラスタの世界が最も色濃く出ているといってもいいだろう。なにせ、スキャタライツのメンバーだった伝説の人、ドン・ドラモンドと同じく、ラスタのコミューンがあったワレイカの丘で過ごすことによって演奏に開眼したと語っているのがリコ。それがそのまま完全な形で表出されているのだ。
「俺はなぁ、派手なソロとかには興味がないんだよ...」
なんぞと言いながら、枯れた「わびさび」のようなソロを聴かせてくれるのだが、それは毎日のように太鼓を叩きながら即興だけで演奏してきたワレイカ時代に培われてきたものだと聞かされている。そのスタイルがナイヤビンギと呼ばれるもので、そんな世界を代表するアルバムに『COUNT OSSIE & THE MYSTIC REVELATION OF RASTAFARI』という傑作があり、これも必聴盤です。
ともかく、気分がのってきたら、誰かがどこからともなくサックスやラッパを吹き始めてメロディを作り、歌を作っていくというそんな感じだったらしいのだが、実を言えば、彼のバンドで演奏するときは、リハーサルもなにもなしでいきなり新しい曲を演奏し始めてバックのメンバーがそれに対応できなければいけないなんて話も聞いた。要するに、神懸かり的なプレイヤーなんだが、そんな彼の修行の成果が見事に結実しているのがこのアルバムだ。
ここには、今でもライヴで必ずと言っていいほど演奏する『Ramble』や『Africa』といった代表曲が収録されているのだが、オリジナルのアルバムに収録されているのは全てリコのオリジナル。実を言えば、リコがトロンボーンの奏者としてだけではなく、作曲家としてもとんでもない異彩を放っているのが手に取るようにわかるのだ。どこか東洋的なニュアンスを醸すメロディ・ラインや奥行きの深いアレンジ、ハートにずしんと響くレゲエのリズム。これを聴いて、未だに『夏はレゲエ』なんて言っている連中がいたら、そんな人間の感性のみならず人間性に疑いを持ってしまうだろうというほどに、レゲエとはなにかを雄弁に語りかけてくれるのだ。
このアルバムが発表された頃、ヨーロッパ・ツアーのサポート・アクトとしてボブ・マーリー本人からどうしても必要だと迫られてツアーに加わったのがリコ。同時に、このアルバムを聴いて、「俺がアフリカにまで行って学んでも得られなかった音をなんでいとも簡単に演奏できるんだ」と話しかけられたのが、ネナ・チェリーの父、ジャズ界の名トランペッター、ドン・チェリーだった。
その傑作アルバムに今回、ボーナス・トラックとして加えられているのが、そのあとに発表される予定だったアルバム『Midnight in Ethiopa』に収録されていた曲の数々。なんでもアイランド・レコードのボス、クリス・ブラックウェルと大げんかして発表を拒絶したらしいのだが、その数曲は以前、"ROOTS TO THE BONE"という、この2枚を合わせたようなコンピレーションで発表されていた。
今回は、それにさらに加えて、とんでもない曲が収録されている。なんと、キンクスの名曲、『You Really Got Me』のカバー。こんなの存在も知らなかったぞぉ!しかも、そのアレンジがにくい。とんでもなく味のあるスカに仕上げているのだ。さらには、これまで人生で1度しか聴いたことがなかった『Star Wars』のカバー、『Ska Wars』まで収録されている。これ、実は、スカフレイムスにいたトロンボーンのナベさんところで聴いているんだが、あの12インチはどこの中古屋を探しても見つからなかったという代物。それが今回はCDに収録されているというので、ファンにしてみれば、たまらない再発売になっているはずだ。
さらに、このアルバムと同時に発表されたのが世界初登場となる『Wareika DUB - Ghetto Rockers - 』。このオリジナル・アルバム、『Man From Wareika』のダブ・ヴァージョンで、これはオークションでとんでもない値段が付けられていたほどのレアもので、一時、レゲエ好きが集まってひとり数万円を出してプレスしようという話が出たこともあったほど。それがCD化されたというのは、レゲエ好きの世界では大ニュースになっているはずだ。
ということで、愛情だけで突っ走って原稿を書いてしまったが、これ、買いなさい。聴きなさい。レゲエの名作アルバムもいっぱいあるけど、これは絶対に聞き逃すことができないほどの大傑作。これを聴かずして、レゲエの話なんてやめてくださいなとでもいいたくなるほどの作品だ。
余談になるけど、このアルバム、実は、アメリカでは、なぜかしらブルーノートというジャズのレーベルから発表されていて、そのアナログもかなりの高値で売買されていた。といって、リコは、「俺はスカのミュージシャンでジャズ屋じゃない」と言っているんですが、同時に、「クリフォード・ブラウンはいいねぇ」というほどジャズ好きなようで、本当はブルーノートから発表されているのが嬉しかったんだろうと察する。今回、このアルバムに収録されている名曲で、デイヴ・ブルーベックの演奏で有名な「テイク・ファイヴ」がそのあたりを雄弁に物語っているし、一昨年のフジ・ロックでこの曲を演奏したときにはあまりの素晴らしさに身体の動きを止められてしまったこともある。
ということで、みなさん、これ、買ってくださいね。聴いてくださいね。いいよぉ。
2004年7月23日記す。
reviewed by hanasan
-->前回のレヴュー - 『(Inside) Out』Warren Zevon
|
|
|