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ジャニスを見ながら、なにを思う?
いろいろ思いを巡らしてみるのだが、未だにジャニス・ジョプリンを越える女性ロック・ヴォーカリストには出くわしたことがない。もちろん、ジャニスが憧れたというBig Mama Thornton』なんてとんでもないヴォーカリストだということは否定できないし、全く違ったタイプだけど、Billie Holidayも越えることができないほど素晴らしい存在だ。どこかでジャンルなんてどうでもいいんだけど、ぐぁ〜んと迫ってくる音圧のあるロックので世界でジャニスを越える人は、やはり思い浮かばないのだ。
そのジャニス・ジョプリンが、アメリカに衝撃を与えたのがMonterey Pop Festivalだった。なんでも、本来はママス・アンド・パパスやサイモン&ガーファンクルを中心としたポップ・フェスティヴァルとして計画されたということなんだが、結果として、このフェスティヴァルで話題をかっさらったのはジャニス・ジョプリンをヴォーカリストにフィーチュアしたビッグ・ブラザー&ザ・ホールディング・カンパニー、ジミ・ヘンドリックス、ザ・フーといったバンドを中心とした新しいロックの世界だった。
* ちなみに、『The Complete Monterey Pop Festival』で初めて映像として姿を見せることになったこの時のバッファロー・スプリングフィールド、ジェファーソン・エアープレイン、アル・クーパーもそんな流れにいるし、そんな彼らが動いて演奏している映像を見るだけでも感動。その他にも、バーズがジミヘンで有名になった「ヘイ・ジョー」を演奏していたり、デビュー直後のローラ・ニーロのライヴを見られたり... 確かに、安い買い物じゃないけど、このDVDはチェックして損はないと思いますよ。
さて、そんなジャニス・ジョプリンを中心に今も生き残っているビッグ・ブラザー&ホールディング・カンパニーのインタヴューや貴重な映像を中心に組み立てているのがこのDVD。そのなかでも語られているのだが、彼らがビートルズ的な旧来のロックの世界ではなく、もっとフォーク的なサンフランシスコの世界をバックに生まれていること、そして、今でいうところのジャム的なインプロヴァイゼイションを中心としたジャズ・ロック的なアプローチを目指していたことなどが語られているのだが、それを解説するレニー・ケイの言葉なんかも興味深い。というか、ジャニスだけではなく、このバンドそのものに関してももっと聞きたいなぁと十分に思わせてくれるのが新しい発見だ。
もちろん、それを証明するために未発表の映像なんかがここに収録されていて、その映像からジャニス抜きでも、このバンドがとてつもない魅力を持っていたことがうかがい知れるのだ。といっても、彼らが世界に飛び出していったのは間違いなく、ジャニスとの出会いがきっかけであり、それ以前といえば、いわゆるフォーク・シンガーだったジャニスが一気に脱皮してしまったというのも面白い。
このDVDは、ふんだんに映像を取り入ればがら、短くも華々しく歴史に名前と名作アルバムを残すことになったジャニス・ジョプリンの伝記を描いているという感じなのだが、なによりも衝撃だったのは、ジャニスを語るときに欠かすことのできない、というよりは、ロックの歴史に絶対に登場する名作アルバム『Cheap Thrills』の録音風景が映像として残っていたこと。これにはびっくり。(特に、あの「サマータイム」を歌っている彼女が見られるのよ。信じられる?)録音しているときに、ヴォーカルとバックの音とのバランスに関してジャニスと他のメンバーが口論している様子とか、よくもまぁ、こんな映像が残っていたものだと思う。それを見られるだけでも、ロック・ファンだったら、卒倒しそうになるほど嬉しいんだけど、結局、このあたりの亀裂がジャニスのバンド離脱、ソロ活動のへの序章となっていくんだろう。
おそらく、前述したように、ジャニス・ジョプリンがロック界最高の女性ヴォーカリストであり、生き急いだ孤高のロック・アーティストだということには異論はないだろうし、ソロ活動以降のジャニスも悪くはないと思うが、なんといっても、彼女の魅力を存分に打ち出していたのはビッグ・ブラザー&ホールディング・カンパニーとのコンビネーションによるもののように思える。
かつてヒッピーのようだったそのメンバーたちが、結構な親父になっているのを見るのは、どこかであまり嬉しいものではないけど、彼らの口から語られる当時の状況やジャニスとの関係にとてつもないリアリティを感じるし、それが映像と重なることによって、文化としてのロックが生まれたときのヴィヴィッドな表情を感じられるのが、どこかで嬉しいと思うのは年齢を重ねたからなんだろうか。
ドキュメンタリーとして収録されている本編とは別に、そのなかでフィーチュアされたライヴ映像の完全版がボーナスとして収録されていたり、当時のフォト・ギャラリーなども、かなりの魅力もの。ロック・ファンだったら絶対にチェックすべき作品だと思う。
2004年6月8日記す。
reviewed by hanasan
-->前回のレヴュー - 『One From The Heart』Tom Waits and Crystal Gayle
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