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絆が切れることはない
なんで今頃、カントリーなのさ。と、そういいたい人間がおそらくは多数派なんだろうと思う。全然ファッショナブルでもなければ、トレンドとも無関係。しかも、レコード会社の人間に言わせると「日本のカントリー・ファンなんて500人よ」なんてことになる。それはどう見ても大げさだけど、カントリーなんて、やっぱ不人気だ。
とは言っても、ウィルコがオルナタティヴ・カントリー・ロックってなニュアンスで人気を獲得しているという話もあるし、なんか人気があるようなので、The String Cheese Incidentというバンドをチェックしてみたら、あれだってこの流れから生まれてきたDavid Grismanが生み出したDawg Music (チェックするには『Hot Dawg』がベスト )の亜流にも感じるし... ともかく、このあたりの音楽にもなんとか日を当ててほしいと思うのは、やはりその昔、この長ったらしい名前のバンドに惚れ込んだ世代の人間だからだろうか..
辞書をひもとくとthe nitty grittyとは問題の核心で、dirtとはカスと、まぁ、そんな意味を持つのかどうか、このバンド(以下NGDB)が日本で人気を獲得したのは『Uncle Charlie & His Dog Teddy』に収録された名曲『ミスター・ボージャングル』が大ヒットしたときだった。オリジナルはシンガー&ソングライターの、Jerry Jeff Walker。同タイトルのアルバムに収められているんだが、好き者にとって最高のヴァージョンは、そのジェリー・ジェフのサイドマンであり、ディランのギタリストとして脚光を浴びてデビューしたDavid Brombergのデビュー・アルバムに収められたもの。残念ながら、これは見つからないけど、『The Player : Retrospective』というベスト・アルバムで楽しむことができる。ライヴ録音でこの歌が生まれた裏話をしながら、Dr. Johnをのアクを少しばかり取った声で歌われるこれを聴いて涙腺がゆるまない人は人間のもぐりだと思う。加えて、日本では中川五郎が素晴らしい訳詞で歌ってました。
ちなみに、NGDBのヴァージョンによるこの曲が今TV CFで使用されているんだが、おそらく、それを決めた人も同年代のカントリーからカントリー・ロックのファンなんだろうと思う。(最近、こうゆう昔の曲がどんどん使われるようになって嬉しいな、親父ロッカーにとっちゃ)
で、このDVDの元になったオリジナルの3枚組アルバム(CDは2枚組)が発表されたのは32年前。いわゆるロックが音楽の世界に革命を引き起こして業界のみならず、多くの人たちが『新しいもの』ばかりに目を向けていたときだった。実を言えば、それと真っ向から背くような動きを見せたのがNGDBの面々。なによりもアメリカ音楽のルーツに立ち返り、古い世代と新しい世代をつなごうというプロジェクトだった。そして集まってきたのはルーツそのものとも言えるカントリー、そして、ブルーグラス界の長老たち。伝説とも言える、ザ・カーター・ファミリーのマザー・メイベル・カーターやとんでもないギターを聞かせるドック・ワトソンやフィドルの第一人者、ヴァッサー・クレメンツ、ニュー・グラスという動きを作っていたバンジョー奏者、アール・スクラッグス... とんでもない伝説を全て集めてアメリカのルーツ音楽を集大成したこのアルバムは地味ではあったが、歴史的な傑作として名を残すことになったわけだ。
その第二作目『Will The Circle Be Unbroken vol.2』が発表されたのが89年。ディランやジョン・ハイアットといったアーティストをゲストに迎えてはいても、最初の作品のインパクトを越えることはできなかった。そして、02年、第三作目『Will The Circle Be Unbroken vol.3』が発表されている。
このDVDはそのアルバムの発表に伴って開かれたライヴの模様を収めたもの。NGDBをバックに、おなじみのアース・スクラッグス、ヴァッサー・クレメンツ、ジミー・マーティンといった伝説にロザンヌ・キャッシュや彼女とデュエットしているジョン・ハイアットからタジ・マハールといったロック界の人々も演奏に加わっているというもの。すでにカントリーの世界から離れていたこともあって若手のシンガーにはなじみがないけど、NGDBのメンバーの子供たちが素晴らしい演奏や歌を聴かせているのにはまいったし、確実に新しい世代が育ってきているのが嬉しかった。
ただ、この時点ではたいして面白くもないなぁ.. と思っていたのも確か。なにせ1600円弱の買い物だから、これでいいんだろうけど、ちょっと不満だったわけだ。ところが、そのボーナス部分にぶっ飛ばされてしまった。35分に及ぶドキュメンタリーで録音中の風景やインタヴューが収録されているんだが、ドキッとするのは今はなきサラ&メイベル・カーペンターに捧げる歌を歌うジョニー・キャッシュだろう。これからわずかの時間で彼自身が天国に召されている。この曲、涙なくしては聞けないと思うなぁ。
その他にもドック・ワトソン、ウィリー・ネルソン、エミルー・ハリスあたりが登場して、どれほど素晴らしいアルバムが生まれてきたかを垣間見ることができる。実を言えば、そのドキュメンタリーを見たおかげで注文してしまったのが、『Will The Circle Be Unbroken vol.3』。いや、それほどまでに充実したレコーディングだったことが十二分に伝わる素晴らしいドキュメンタリーなのだ。加えて、まだまだボーナス映像も収録されていて、このDVDも安すぎる!と思うに至ったわけだ。
ところがどっこい、その後にみつけてしまったのが『Will The Circle Be Unbroken : The Trilogy』。なんと『永遠の絆』の全三作にこのDVDを加えてボックス・セットにして5000円で売られている。しかも、再発売された一作目に加えられているボーナス・トラックも全部入って...あぁ、なんかショックが大きいなぁ。音楽の絆が切れないのはいいけど、音楽オタクの悪循環は切りたいなぁ...
*当初アップした原稿で間違っていたのはこの曲をジャニス・ジョプリンがカバーしているという下り。実は、中川五郎のカヴァーで『ミスター・ボージャングル』と『俺とボビー・マギー』を混同してしまったことが原因です。自分の記憶の中で彼は両方ともカヴァーしていると思っているんですが、後者は俳優としての方が有名になったクリス・クリストファーソンのオリジナルで(ベスト・アルバム『All Time Greatest Hits』でチェック可)、ジャニス・ジョプリンが『Parl』でカヴァーしています。ご迷惑をおかけしました。お詫びして訂正します。もちろん、中川五郎のこのカヴァーは絶品です。
2004年1月25日記す。
reviewed by hanasan
-->前回のレヴュー - 『American Folk Blues Festival 1962 - 1966 vol.1』 |
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