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伝わる歌、伝わる声、伝わる人..
なにがどう転んでこうなるのか、その理由はいざ知らず、ともかく、この人、三代目春駒小林一彦なる人物と会った。きっかけはケムリの"typhoon"ツアーだった。いつもは北を目指すのに、なぜか、南に向かいたくて、彼らのツアーに合流したののが実家のある米子。それから広島を経由して九州まで1週間ほどケムリに同行し、一時、彼らと離れて再び顔を合わせたのが川崎のクラブ・チッタと、結果として、その翌日にケムリのトランペッター、森村亮介が現世を離れる直前までかなりの時間を彼らと共有したことになる。
それはさておき、この三代目春駒小林一彦と出会ったのは米子からバスで向かった広島クアトロの楽屋である。ライヴの前かあとか...どっちだったかは全然覚えてはいないんだが、そこで彼に出会い、このCDを聞いた。そして、びっくりした。いい... いいのだ。
さて、なにがいいのか.. 耳にした直後なんて全然わからない。第一印象なんてそんなもので、ともかく、彼の声にはまった。説得力があり、引きつけられる。そして、なにかが伝わる。なにを伝えようとしているのか、なにが伝わってくるのか、それはその時点では全然わからなかったけど、幾度か聞くにつれて、その声にのせている言葉の説得力にまた気がつくことになる。
鳥の鳴き声とシンプルなウクレレのイントロで幕を開け、いきなりスカ・パンクをベースとしたパワフルなサウンドに突入する"ぴぴららOne Love"が1曲目。降り注ぐ太陽の光の下、「着ているものは脱ぎ捨てなさい」というフレーズがやけに印象に残るこの曲は、グンとへこんでしまった自分に再び生きる力をくれたように思える。そして、カリブ海の波を思わせるようなカリプソとレゲエが合体したようなリズムにのって沖縄の豚足料理、テビチを食べようという、ご本人曰く「沖縄観光キャンペーン・ソング」が続く。なんでも、9/11事件の後、文部省が「テロに警戒するために沖縄への修学旅行は控えるように」と全国の小中学校に通達したことに頭に来て速攻で書き上げたということらしいが、この歌には普通の人たちの普通の生活のなかにある当たり前の人間の美しさを感じるのだ。
そして、まるでマーヴィン・ゲイの"ワッツ・ゴーイング・オン"をそのまんまいただいたような"その男、ヨシオ"にやられた。なんでも、原爆の直後のがれきの下、焼けこげた死体が転がるなかで家を建て、あのピカドンの3日後には風呂につかったという豪快な、同時に、絶望のなかでもくじけることなく生き続けた愛すべき彼のおじいさんの手記を元にこの歌が生まれたということだ。決してあきらめることなく、生き続けようというこの歌に込められた思いは、正直、おそらく、最も強力に反戦と平和を訴えた名曲"ワッツ・ゴーイング・オン"にも匹敵すると言ってもいいだろう。
最後を飾るは満天の星空の下、波間に漂っているようなのんびりとしたメロディと心地よいリズムで作られた"星の波間に"。愛すること、平和の重要性をすんなりと歌ったことれもすばらしい。
なんでも、三代目春駒小林一彦氏の活動歴は20年ほど。なにやら、こんなにすばらしいミュージシャンを知ることもなく20年を無駄にしたことが悔やまれる。日頃はウクレレか、アコースティック・ギター1本で地味に演奏しているらしいが、時にはこのアルバムのメンバー全3人でfar east loungeの名の下にライヴをすることもあるようだ。広島近辺の方々は是非、彼らをチェックしてもらいたいものだ。
なお、このCD、本当の意味でインディということもあり、通常の流通経路では入手不能だとのこと。彼のホームページを経由して、注文していただければ幸い。曲のチェックも可能だし、なんと武道家でラジオのDJでもあるという氏の世界をかいま見ることもできる。
*左の両CDですが、ジャケットは違いますが、内容は同じです。なぜか... 理由は三代目春駒小林一彦でご確認を。
2003年11月15日記す。
reviewed by hanasan
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