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2008年12月11日
690円の密かな楽しみ
再び「こんなことを書いている場合ではない」と思う。大麻報道に見られるメディアの極端な偏向や情報操作に「ジャーナリズムの死」を感じているし、押し寄せる不況の波がなにを生み出していくかという点についても危機感を持っている。当然ながら、そこから派生する不当解雇はまず弱者の直撃だ。最初のターゲットになるのは外国人研修制度の名を借りて奴隷のように扱われる、主にアジア系の労働者やブラジルから出稼ぎに来ている人々。次に来るのは「日雇い」にも匹敵する「低コスト」の派遣労働者だというのはいうまでもないだろう。前者は蚊帳の外に置かれているように思えるのだが、このところ、毎日のようにメディアを騒がせているのが後者だ。「経費削減」のために彼らが捨てられて、続くのは社員の首切り。ほんの少し前までは「史上最大の経常利益」なんて言葉が新聞の紙面を飾っていたと思うんだが、あれはどこへ行った? おそらく、今のメディアのあり方や警察の横暴は、来るべき大衆運動に対する圧力の伏線で、同時に、弱者がより弱い弱者を作る動きが出てくるはず。忘れないで欲しいと思うのだ。ファシズムは優しく、心地よく人を飲み込んでいくということを。歴史が語りかけているのはそれじゃないですか?
と、そんなことを思いながらも、CDを買い漁って、こんなことを書く自分がいるのです。だってねぇ、信じられないほどの値段で名盤を聴くことができて... そんな喜びを少しでも誰かと共有したいと思うのですよ。例えば、このアルバム、リトル・フィートの名作『Time Loves A Hero』も、この原稿を書いている12月11日の段階でたったの690円。たまりません。アナログでしか持っていなかったこのアルバムもこれを機会にCDを購入。久しぶりにじっくりと聞いて、その素晴らしさに再び感動してしまうわけです。というので、このあたりを紹介してみたいと思ったのです。
めちゃくちゃ味のあるスライドを聴かせるローエル・ジョージ率いる... というよりは、彼そのものであったリトル・フィートの名盤として世に知られているのは、もちろん、『Dixie Chicken』。同時にコアなファンにとってみれば、『Sailin' Shoes』も絶品で、少なくとも、この2枚に加えて全盛期のライヴを収めた『Waiting for Columbus』を持っていれば彼らの魅力は充分に理解できると基本的には思う。っても、個人的にベストのベストなのはローエル・ジョージにとって唯一のソロ・アルバムとなった『Thanks I'll Eat It Here』。これがすごい。
とはいいつつ、実はほぼ全てのアルバムを持っているのだが、CDで持っていなかったというので、今回690円に釣られて購入したのが『Time Loves A Hero』だった。プロデューサーはドゥービー・ブラザーズの一連の作品で知られるテッド・テンプルマンで、このアルバムが発表されたのは77年。その前年に発表されているドゥービー・ブラザーズの『Takin' It to the Streets』と聞き比べると、また面白いのだ。これも690円だというのが嬉しいんだが、ほぼ同じ時期に同じプロデューサーが関わっていて、さらには、それぞれのミュージシャンがそれぞれの作品にゲストとして加わっているわけです。というので、まるでドゥービー・フィート(!?)じゃんと思わせる曲があったり... それでいながら、どうしてもリトル・フィートであり、どうしてもドゥービーだというあたりがさすがなんだと思う。
特に、今回、この『Time Loves A Hero』をひさびさに聴いて、スピード感のあるグルーヴやタイトなサウンドに昇天してしまうのです。ジャズからファンクの要素を飲み込んで... ライヴだったら、これで延々とジャムってしまうんだろうなぁと思うとゾクゾクします。っても、ライヴは見たことがないんですが。今回これを買ってリピートで、しかも、フルヴォリュームで聴いているのがインストの4曲目「Day At The Dog Races」。この曲でのソロの流れやタイミング... とんでもない傑作だと思う。
一方、ファンのなかで賛否両論に別れるらしいドゥービーの『Takin' It to the Streets』ですが、正直言ってしまうと、自分の中ではこれが最大の傑作です。もちろん、初期の傑作、これも今690円で購入可能の『Toulouse Street』が素晴らしいのはいうまでもないし、名曲、「Listen to the Music」や「Rockin' Down the Highway」が収録されたこれも持っていて当然。ただ、グイグイと、どこかで押しと乗りの良さだけで突っ走っていたドゥービーが、マイケル・マクドナルドの加入で微妙なリズムやジャズやソウルっぽいタッチを手に入れたのではないかと思うのですよ。その両者が絶妙のバランスの上でせめぎ合っているのが『Toulouse Street』で、それをさらに推し進めたのが77年の作品、『Livin' on the Fault Line』。そして、ポップでAOR色を異様に強くした78年の『Minute by Minute』で、実をいうと、これで「ロックなドゥービー」は幕を閉じたと思えたものです。まぁ、昔から好きだったので、後の『One Step Closer』も買ったけど、これを繰り返して聴くことはほとんどなかったというのが正直なところ。
と、まぁ、わずか690円でこのあたりのアルバムを購入できるというのが実に嬉しい。探せば、まだまだいろいろあるんですが、この値段がいつまで続くかはわかりません。これを機会に、いわゆる「名盤」を聴いていただければ嬉しと思うのですよ。まぁ、amazonの場合、1500円以上買わないと送料が無料にならないから、3枚ぐらい買う羽目になってしまうんですけどね。
ちなみに、車を運転するときの定番は『Takin' It to the Streets』。これとオールマン・ブラザーズの『Fillmore East』があれば、気分よく運転できます。おそらく、次回はここにリトル・フィートの『Time Loves A Hero』が加わることになると思いますけど。
投稿者 hanasan : 2008年12月11日 09:53