帰ってきたスペシャルズ

 スペシャルズが帰ってきた! しかも、前線復帰第一弾として引っ提げてきたのはスカ版『レイバー・オブ・ラヴ』とも呼べる、スカ&ロックステディの名曲カヴァー・アルバム。デスモンド・デッカーのルード・ボーイ讃歌『007(シャンティ・タウン)』からトゥーツ&ザ・メイタルズの『プレッシャー・ドロップ』やヘプトーンズの『ヒポクリット』… と、スカ・ファンにはお馴染みの曲がぎっしり詰め込まれている快作だ。

 が、残念なのは、かつてバンドの顔だったジェリー・ダマーズとテリー・ホールが姿を見せていないことだろう。アルバム発表を直前に控えた新生スペシャルズで、スポークスマン的な役割を果たしているリンヴァル・ゴールディングとの電話インタヴューで、まずは尋ねたのがそのことだった。

「もうテリーとは全然連絡がなくなったから… 彼のことはよくわからないよ。ただ、。ジェリーとは今でも親しいし、一緒にDJもしているからね。バンドを再編成することを彼に相談しなかったことで、ちょっとむくれていたけど、いずれにせよ、彼はライヴをやりたがっていないから。それに、今でも僕ら、みんなコヴェントリーに住んでいるんだけど、彼はロンドン。だから、自然にこうなったんだ」

 70年代終わりから80年代始めまで、まるで超大型台風並の猛威をふるったのがスカとパンクが合体した2トーンだった。その中心となったスペシャルズの出身地がコヴェントリー。同時期に登場したビートの出身地、イングランド西部の大都市、バーミンガムの郊外のような街で、セレクターの出身地でもある。当時、ここに設立されたのがそんなスカ・バンドの作品を怒涛のように発表していた2トーン・レーベル。いわば、その台風の目で再始動したのが新生スペシャルズだ。

 さて、当然気になるのはそのきっかけだが、発端はスペシャルズとビートの残党が結集したスペシャル・ビートだという。

「僕は彼らに誘われてバンドに参加したんだけど、その後、デスモンド・デッカーのアルバム作りに誘われてね。その時点で(元ビートの)ランキン・ロジャーはバンドを離れて… 気がついたら、スペシャルズのオリジナル・メンバーが4人揃ってたっんだ。だったら、スペシャルズを復活させようって感じだったんだ」

 彼曰く、デスモンドとのアルバムはバックに徹しているので、彼らの再出発アルバムとはいいがたいというのだが、面白いのは彼らの復帰第一作となった今回のアルバムがUB40のアリ・キャンベルが設立したレーベルから発表されていることだろう。

「実は、UB40が最初にデモ・テープを送ってきたのが2トーン・レーベルだったんだ。当時は僕ら、大成功していたからね。でも、ジェリーが『レゲエ過ぎて面白くない』って、契約しないことになったんだ。あの頃、僕らが目指していたのはスカとパンクが合体した、文字通りの2トーン・サウンドだったから… ところが、僕らの復帰が彼らの関係するレーベルからだってから面白いよね」

 さて、「それぞれのメンバーが好きな曲を持ち寄って、カヴァー・アルバムを作ることにした」というのが今回のコンセプトなのだが、スカには縁もゆかりもないような曲が収録さえているのが面白い。おそらく、その筆頭がクラッシュの『誰かが殺された』だろう。 「これはもうひとりのギタリスト、ロディの選曲なんだけど、クラッシュに対する感謝の意味も込めているんだ。だって、(78年に)僕らを前座としてツアーで使ってくれたことが、僕らのブレイクのきっかけになってるから」

 そして、ポーグスで大ヒットしたフォークの名曲『ダーティ・オールド・タウン』もちょっと毛色が変わっている。

「あれとスリム・スミスの『タイム・ハズ・カム』は、僕らにとって重要な存在だったデイヴ・ジョーダンに捧げてるんだ。デビュー・アルバムでエンジニアをしてくれて、2枚目ではプロデュースもしてくれた人物なんだけど、去年の今頃、パリで死んじゃってね。彼が好きでたまらなかったのがこの2曲なんだ」

 また、ソカっぽい風味を聞かせたアレンジで演奏されているのが、なんとモンキーズのヒット曲『恋はちょっぴり』。これなんぞ、あまりにスペシャルズらしからぬ選曲にビックリした人も多いだろう。

「いやぁ、あれはネヴィル(ヴォーカル)の選んだ曲で、彼が子供の頃、毎週テレビにかじりついてあのシリーズを見ていたというんだよね。ただ、それだけの理由なんだ」

 とは言いながら、それを完全なスペシャルズ・ヴァージョンに仕上げているのはさすがだ。その他、巨匠、リコ・ロドリゲスのヴァージョンをお手本とした『テイク5』をダブ・ジャズっぽくアレンジするなど、実に聞きどころの多いがこのアルバム。できるだけ多くの人たちに勧めたい1枚だ。

written in March 1996.

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