日本国憲法の平和主義を絵にかいた餅にしてはならない。憲法の保証する平和的生存権は、具体的な法的権利である。
1991年湾岸戦争に際しての日本国の90億ドル支出と自衛隊掃海部隊の派遣は日本における改憲への第一歩と位置づけられる。国際的に日本は血を流さず金のみを遅く出したので不評だったと報道された。しかし、日本国憲法は自衛のためであっても一切の軍隊を否定している。自衛隊の存在そのものが憲法違反であることを忘れている議論がある。この点についての国際的議論も活発にして行く必要がある。
平和主義憲法の成果として、日本はこの50年間、軍隊による殺人をしなかったことは記録すべきことだ。しかし、経済大国となった日本が、軍事大国になることは際的にも歓迎されないだろう。特に、市民平和訴訟で問う平和的生存権は、被害者にならないだけではなく、加害者にもならないという点を中心に据えた。
私達は主権者として、政治的判断をすると同時に、人権の主体として、司法手続きも積極的に活用する。この権利行使は国民の義務と思う。多くの人々がこの権利行使を始めるときに、社会は変わってゆく。
この訴訟の内容
日本国憲法の規定する平和的生存権、納税者基本権、および、裁判を受ける権利を柱に、「日本国政府の戦争費用支出差し止め・自衛隊派遣差し止め、および、原告への慰謝料請求」を求め、全国的な提訴を行った。私達は、これを「市民平和訴訟」と名付けた。後に、戦争費用支出差し止め・自衛隊派遣差し止めの訴訟は、違憲・違法確認訴訟に変更した。
この訴訟の経過
東京においては、原告1067名、弁護士86名、さらに、支援者が参加して、「市民平和訴訟・東京」となり、東京地方裁判所の最大の法廷を人と花で埋め続け、本当の口頭弁論を、原告と弁護士が共同で、毎回1〜2時間行った。この種の訴訟は書類交換で終わるという通例を破った。大阪、名古屋、広島、鹿児島でも、同様の提訴が行われた。
今までに、証人として、早稲田大学教授、日本大学教授、シンガポール・コラムニストの証言を得た。原告自身の中からも4人が証言を行った。元アメリカ司法長官:ラムゼー・クラーク氏がビデオ撮影した、イラクの被害の状況も、法廷で上映された。
20回に及ぶ口頭弁論は1996年2月7日に結審し、5月10日に判決が言い渡された。
判決の内容
判決は、違憲・違法確認請求に対しては却下、慰謝料請求に対しては請求権棄却された。その理由は、三権分立の原理からの司法の限界があるということ、さらに、裁判を求めた権利、すなわち、平和的生存権・納税者基本権の抽象性や解釈困難性により、請求は認められないという。しかし、湾岸戦争への政府荷担行為という具体的な問題であって、裁判所が判断可能であり、また、具体的問題として判断すべき事である。
私達は「市民平和訴訟」を継続し、東京高等裁判所に控訴して引続き闘う。控訴人187名である。
この訴訟の全記録は、記録誌「未来へ」第1号〜第19号、および、原告団ニュースNo.1〜No.50に収録されている。