やはり控訴審も不当判決、しかし上告せず
●全文わずか14頁
6月24日の控訴審判決は、満席とはいえなかったが原告・支援者の多くが参加した。4月24日第9回弁論、結審の日から人事移動で福永政彦裁判長から武田多喜子裁判長に替わっていた。判決は武田裁判長の主文読み上げて一瞬のうちに終わった。
主文は控訴棄却。違憲確認は不適法で却下、国賠は理由なく棄却、「原判決は相当」とする「軒並み」のパターンで、主文については予想どおりだった。
中北弁護士の判決文受け取りを待つ間、高裁屋外で「宮本キミエさんを偲ぶ会」(6月21日)などの報告があった。
判決内容について中北弁護士の簡単な報告のあと、場所をプロボノセンターに移し、改めて原判決の訂正・引用部分を読み比べながら、控訴判決文の説明が行われた。
全文14頁、判断部分5頁という極めて短い判決文で、原判決文が全文102頁、理由判断部分21頁に比べ対照的だった。(※東京、鹿児島の原判決で約70頁。)
ただし、原判決の何頁から何頁までを「引用する」とか「次のように書き改める」などがあり、原判決を見比べながらでないと分かりにくい。なお、事実経過の前半部分では番号ずれや字句の訂正などがあり、原判決が慌てて書かれた形跡が伺われる。
●上告せずを確認
弁護士の判決文説明のあと上告するかどうかを話し合った結果、裁判の経過や諸般の状況からみて原告団、弁護団とも上告しないことを確認した。当日話し合い参加者のなかでも特に「上告すべきである」という意見は出なかった。しかし、本人自身で「どうしても上告したい」と言う人があれば妨げないことも確認された。
現在、湾岸訴訟関係では、東京、名古屋、鹿児島、大阪掃海艇が何れも上告中。これら上告を巡っては、弁護団と原告側、又は原告間にも積極・消極があり上訴人数は次第に減少している。提訴一年遅れのPKO訴訟の関係でも、例えば東京訴訟団は控訴せずゴランPKF訴訟に集中している。(※ただし、極小の本人で控訴し更に一人が上告するなどがあった。)そして、このほど東京PKO訴訟団編による裁判記録集(緑風出版
)が出版された。一審経過だけでも、こうして世間に公表されてみると裁判のもつ意義は大きい。
名古屋(市民平和)は上告して一年半を過ぎるが最高裁の音沙汰はない。東京(市民平和)は上告後「弁論を開け」など、最高裁宛ての署名を集めて要請している
●地裁原判決の突出性
平和的生存権、納税者基本権、思想良心の自由権などの権利侵害では、各地とも提訴の趣旨は共通している。各原判決は一言でいって、これら権利主張は具体的な権利性・裁判規範性がなく認められないとするもので、これらに文言を費やしているに過ぎない。
いわゆる「統治行為論」・・一見明白な違憲でない限り、高度に政治的問題は裁判所判断に馴染まない・・とはっきり表明した判決はないが、それに近い見解をとる。また、これらを判断するまでもなく訴訟要件がないとして、訴えを退けてきたのがこれまでの判決経過と言っていい。そして、大阪地裁原判決は別として、今回の大阪高裁判決もその部類に入る。
一連の判決のうち大阪地裁判決は自衛隊合憲論を展開するなど、具体的に第九条等憲法条項に踏み込んだ判断を示し、ほかの判決に見られない突出性があった。
私たちはこの原判決を、控訴判決がそのまま認めてしまうことを危惧した。これが上告によって原判決が検討され、更に最高裁による自衛隊合憲の「お墨付き」ともなれば、なお更まずい結果になるとも思っていた。従って、主文はともかく、判断部分で高裁が丸飲み込みしないことを願った。
すでに、かつて「護憲政党」といわれた旧社会党は、村山首相時代に自衛隊合憲を宣言した。現在は名称を変えて土井執行部に変わったものの、これらを帳消しにしたわけではない。こうした状況の変化は、裁判所にも微妙に影響せずにはいない。また、自衛隊海外派兵が繰り返されるなかで衝撃的な事件・事故もなく、国内でも災害派遣等で一定のPR効果をあげている。
●原判決の問題部分避ける
今回の控訴審判決は短文ながら検討してみるところ、「原判決は相当」としながらも必ずしも丸飲み込みというわけではない。しかし、次のような承服できないところもある。
国費の支出に不満であれば、国会や政治活動で問題解決を図れなどは、原判決の発想と同じであり、それでは何のために裁判所に救済を求めたのか分からない。
今回の控訴判決「理由」には、現判決文を『次のとおり改める』と『そのとおりであるから引用する』というくだりがあり、「引用」は頁を示すだけとなっている。
例えば『・・右請求の当否を決める前提問題として、本件政令の制定交付等が違憲であるかどうかについても審理、判断されるのであるから、・・』と原判決が述べるのにたいして、控訴判決はこれを打ち消す形で『次のとおり改める』としている。
つまり、原判決では、請求を退けるかどうかは、どうしても違憲かどうか判断しなければならないことを前提にした判決文構成となっている。これに対して控訴判断は憲法判断するまでもなく原告らの訴えに理由がないとする立場である。
だから原判決は、自民党国会議員のおっさんでも言いそうな、通俗的な自衛隊合憲論を述べて見せる。このほか九〇億ドル支援や掃海艇派遣についても同様だが、合憲論を展開するには、それなりの厳密な論理構成が必要なのだが、まるでつまみ食いのように合憲論を開陳する。一片の判決文でそう安易に断定されるべきものではない。
控訴判決の言う『この通りであるから引用する』は、読む者自身が原判決からその部分を探ってみなければ分からない。原判決九二頁から一〇一頁までとする、長い「引用」部分は、平和的生存権、納税者基本権、思想良心の自由について述べた部分である。
問題の自衛隊合憲論などは、原判決の八七頁から九二頁にかけて述べられているが、控訴判決ではさすがにこの部分の引用は用心深く避けている。
つまり、『原判決は相当』と支持しながらも、引用と改定部分をもって高裁判断とし、『その余りを判断するまでもなく』と無視・切り捨てたうえで、だから控訴人らの請求には理由がないとする。この他にも問題点はあるが、以上が控訴判断の概略である。
●今後の問題
裁判に一度も来たことのない人が、突然「上告する」と言い出すなどありえない事だと思っています。しかし、ともかく判決関係資料と上告しないことの報告など、控訴人の方に送ります。国が上告するはずがありませんから、これで地裁の暴走判決を高裁が押さえた形で確定するでしょう。(湾岸訴訟では初めて)最高裁で争うにしても理論面、運動面ではその態勢にありません。傍聴の減少又は関心低下は運動疲労を物語るものでしょう。
今後の問題として、訴訟団解散総会、代理人感謝パーテイ、代理人の謝礼と記録出版のためのカンパ要請など早急にとりくまなければなりません。これらは追って全原告、又は支援者の方に連絡するつもりです。北方機動演習の「おおすみ」神戸寄港反対その他の運動や雑事に追われ、今回もお知らせが遅くなりました。
98.7.5 市民平和訴訟の会関西 事務局 和田喜太郎
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