(注)・控訴人の個人名は「*」で置き換えてあります。
1998(平成一〇)年三月六目判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
1997(平成九)年(ネ)第三二号 九〇億ドル支出違憲確認等請求控訴事件
(原審鹿児島地方裁判所1991(平成三)年(ワ)第二五八号事件)
口頭弁論終結日 1997(平成九)年一一月二一日
判 決
熊本県玉名郡横島町大宇横島八一八八番地。
控 訴 人 * * * *
東京都千代田区霞ケ関一丁目一番一号
被 控 訴 人 国
右代表者法務大臣 下 稲 葉 耕 吉
右指定代理人 小 澤 正 義
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同 江 上 久 継
同 塩 屋 朝 治
同 松 木 末 男
同 竹 原 一 郎
同 永 田 秀 一
同 堀 地 徹
同 吉 田 孝 弘
同 松 尾 友 彦
主 文
一 本件控訴を棄却する。
二 控訴費用は控訴人の負担とする。
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事 実 及 び 理 由
一 控訴人は、「原判決中、控訴人関係部分を取り消す。被控訴人が九〇億ドルを
支出したことは違憲であることを確認する。被控訴人がペルシャ湾において機雷
の除去と処理のために海上自衛隊所属の掃海艇及び自衛隊員を派遣したことは違
憲であることを確認する。被控訴人は、控訴人に対し、一万円を支払え。訴訟費
用は、一、二審とも、被控訴人の負担とする。」との判決及び仮執行の宣言を求
め、被控訴人は主文同旨の判決を求めた。
二 本件の事案の概要及び争点は、原判決事実摘示のうち控訴人関係部分記載のと
おりであるから、これを引用する。
三 当裁判所も、控訴人の本件訴えのうち、被控訴人が湾岸平和基金に九〇億ドル
を支出したこと並びに被控訴人がペルシャ湾において機雷の除去と処理のために
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海上自衛隊所属の掃海艇及び自衛隊員を派遣したことが違憲であるとの確認を求
める訴えは不適法として却下すべきであり、控訴人のその余の損害賠償請求は理
由がなく、棄却すべきであると判断するものであるが、その理由は、次のとおり
である。
1 本件違憲確認の訴えについて
控訴人は、憲法上、日本国民及び日本国に居住する外国人は平和的生存権を
有し、納税者は納税者基本権を有するとし、それらの憲法上の基本権が国の行
為によって侵害されたときは、日本国民又は納税者は、国に対し、民事訴訟法
等の手続により国家賠償等を求めるだけでは不十分であり、それらとともに、
違憲審査権を有する裁判所に対し、国の行為の違憲判断を求め、判決主文にお
いて、国の行為が違憲であるとの宣言を求める確認の訴えを提起することが憲
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法上認められていると主張し、その根拠として、憲法八一条、七六条、七七条、
三二条を挙げている。
しかし、憲法が裁判所に与えている権限は司法権に限定されている(憲法七
六条)ところ、司法権は、本来、具体的な権利又は法律関係について紛争が生
じているときに、法を適用してその争いを解決することを本質とする権能であ
るから、裁判所の有する違憲審査権も、具体的な権利又は法律関係についての
訴訟事件を解決する過程において国の行為等の違憲、合憲にかかわる争点につ
き判断するにあたって行使されるものであって、国の行為等について抽象的に
違憲、合憲を判断できるものではないと解すべきである。このことは、憲法八
一条が司法権の章に置かれていることからも明らかである、
もっとも、憲法は、具体的な争訟を離れて裁判所が法適合性を判断すること
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を一切禁止しているものではなく、法律によって、そのような訴訟の形態を設
けることは可能であり、民衆訴訟(行政事件訴訟法五条、四二条)、住民訴訟
(地方自治法二四二条の二)等がそれに当たるが、それらは本来の司法権に根
ざすものではなく、立法政策上の見地から設けられたものであって、そのよう
な訴訟形態が法律によって設けられていることをもって、具体的な争訟を離れ
て、国の行為の違憲性の確認を求める訴訟が憲法上認められていると解するこ
とはできず、控訴人が挙げる憲法の各条項もこれと別に解する根拠となるもの
ではない。
しかるところ、控訴人の主張する本件違憲確認訴訟というのは、平和的生存
権又は納税者基本権を有する日本国民又は納税者がその地位に基いて抽象的に
国の行為等についての違憲宣言を求めることを内容とするものであるから、上
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記理由によりこれを認めることはできない。
右の点について、控訴人は、平和的生存権又は納税者基本権が国の行為等に
よつて侵害された場合に、日本国民又は納税者が国に対し民事訴訟法等の手続
により国家賠償等を求めるだけでは権利の救済手段として不十分であると主張
するが、その主張する権利が個別的権利として認められるものであれば、その
侵害に対する救済手段としては、国に対し、その侵害の除去又は国家賠償等を
求めることが最も有効かつ適切であり、必要があれば、その判断の過程におい
て、国の行為の合憲、違憲の判断を求めれば足りることであるから、控訴人主
張の本件違憲確認の訴えを認めないからといって、権利の救済に不十分とはい
えず、また、憲法三二条が保障する国民の裁判を受ける権利を損なうものでも
ない。
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したがって、本件違憲確認訴訟が憲法上認められているとの控訴人の主張は
採用できない。
なお、付言すると、本件は、既に被控訴人が九〇億ドルを支出済みであり、
また、被控訴人がペルシャ湾に派遣した自衛隊の掃海艇及び自衛隊員は日本に
帰還していることは当事者間に争いのないところであるから、本件違憲確認の
訴えは、いずれも過去の事柄についての違憲確認を求めるものとなるが、わが
国における確認訴訟制度は基本的に現在の権利又は法律関係の紛争を解決する
ことを目的とするものであり、過去の事柄についての権利又は法律関係の確認
は現在の紛争の直接的かつ抜本的な解決のために最も適切かつ必要と認められ
る場合に限って許されるものである。しかしながら、控訴人と被控訴人との間
の現在の紛争は、本件損害賠償請求権の存否であり、それを解決するために、
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本件違憲確認の訴えが最も適切かつ必要とは認められないから、本件違憲確認
の訴えは、確認の利益を欠くものである。
したがって、本件違憲確認の訴えは、不適法であり、却下を免れない、
2 本件損害賠償請求について
この点については、次のとおり付加、訂正するほかは、原判決理由「第二
本件損害賠償請求に対する判断」に記載したところと同じであるから、これを
引用する。
(1) 原判決五六頁一一行目及び同六一頁九行目から一〇行目の「いうべきであ
る。」を「表現することも、権利の意味を広く解する立場からすると不可能
ではない。」にそれぞれ改める。
(2) 原判決六四頁九行目の次に改行して、次を加える。
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「 また、特に、納税者基本権の具体的権利性に関して更に検討する。納税者
基本権が侵害されるか否かは、そのほとんどは、結局、その支出にかかる行
政行為が憲法に違反するかどうかに帰着するから、司法審査を受けるために
は、具体的事件争訟性を前提にして、その行政行為自体の違憲性を争うこと
が可能であるところ、憲法が、それ以外に納税者基本権の実現のため予定し
ている手段としては、八三条、八五条、八六条の規定の趣旨からすると、国
民の国会を通じての間接民主制による是正に過ぎないと解される。この点、
控訴人の主張のように、納税者基本権を裁判規範性をもつ具体的権利と解す
ると、結局、その支出にかかる行政行為について、広く民衆訴訟を認め、違
憲審査しうるとの結論を導くものとなり、憲法の定める付随的違憲審査制と
矛盾する結果を招来するものであって、そのような主張は憲法の予定すると
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ころではない、したがつて、この点からも、納税者基本権は具体的権利とは
いえないというべきである。」
(三)原判決六六頁七行目「侵害されたことに」の次に「一律に」を加える。
四 以上のとおりであるから、原判決は相当で、本件控訴は理由がないからこれを
棄却する。
福岡高等裁判所宮崎支部。
裁 判 長 裁 判 官 海 保 寛
裁 判 官 多見谷 寿 郎
裁 判 官 水 野 有 子
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