[市民平和訴訟の会・東京]最終準備書面:終章
(注)原告及び証人の個人名は「*」で置き換えてあります。
丸付き数字はカッコと数字に置き換えてあります。
終 章 原告の願いと裁判所の使命
一 湾岸戦争が、フセインの蛮行を抑える正義の戦争であるというアメリカのふ
れこみがいかに誤りであり、実はアメリカの石油権益確保という目的の下に計
画的に、かつ意図的に仕組まれた戦争であったことは、今までの論述、全証拠
によって余すところなく当法廷において明白となった。
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かいつまんでいえば、
1 ニセの証言(ナイラ)によるフセインの悪魔化、
2 虚偽であったピンポイント爆撃、
3 イラクのしわざとされた「油にまみれた水鳥」は米軍が爆撃した原油貯蔵
施設から流出した油によって被害を受けたものであり、水鳥は「ヤラセ」だ
ったこと、
4 錦の御旗とされた「国連武力制裁容認決議」が実はアメリカが買収したも
のであること、
等である。これらが事実であったということは、アメリカ議会の公聴会、国際
的な機関や報道によって国際的にもあまねく知られている事実となっているの
である。そして又、これらの事実については当法廷においても国側によって何
等反証がされていないので、事実上国はこの事実を認めていると言わざるを得
ないのである。
二 このように湾岸戦争はウソと欺瞞によってぬりこめられた不正義の戦争であ
ったにもかかわらず、「正義の戦争」であると宣伝がなされた。国際貢献の美
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名の下に日本政府がかねてより宿願であった違憲の自衛隊の海外派兵を掃海艇
の派遣という形で突破口を開き、又、アメリカへ九〇億ドルもの支出がなされ、
アメリカの石油権益支配のための戦争に加担し参戦した。
意図的な報道規制により国民に真実が知らされないまま、フセインの蛮行に
対するやむをえない措置と称して、これらの決定が次々となされたのである。
三 国政の場において憲法が最大限尊重され生かされなければならないのは当然
である。
****の証言にあるように、日本が侵略戦争に対する明白な謝罪をしない
まま、そして平和憲法が厳然と存在しているのに、湾岸戦争に対して「貢献」
するという日本を見るアジアの人々の目は厳しく、また、再び侵略行為をする
のではないかとの危惧の念を生んでいる。
本件、アメリカへの戦費九〇億ドルの支出、掃海部隊派遣を既成事実とし、
突破口として利用しながら、政府は自衛隊を海外に出していくためのPKO協
力法制定(一九九二年六月)、自衛隊法改正等を行った。そして、その後カン
ボジア(一九九三年)、ソマリア(一九九四年)、ルワンダ(一九九四年)、
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ゴラン高原(一九九六年)へと自衛隊を派遣した。また、アメリカの地球規模
での覇権体制確立に日本も全面的に手助けするため、日米安保体制は拡大、強
化され、米軍と自衛隊との共同演習はますます強化されている。
欺瞞による世論誘導をしながら、憲法の基本原則が蹂躙されたことは既に明
らかである。この政府の行為を違憲、無効と貴裁判所が判断することによって
初めて、国政全体として正義が回復されるのである。そのためにこそ、違憲立
法審査権が裁判所に付与されている。本件において貴裁判所は違憲判断を躊躇
すべきではない。
四 違憲立法審査権を行使するにあたっては、自制的でなければならないといわ
れることがある。この主張の骨子は、要するに裁判所は直接国民から選ばれて
いないという意味において民主的な機関ということは相当でなく、国民を代表
する立法府の判断をこそ最大限に尊重すべきである。したがって裁判所は国の
行為を違憲、無効とすることには慎重であるべきで、その違憲性が明白である
場合に限って違憲判断をすべきであるというものである。
このような司法自制論はそれなりに理由のあるものであるかもしれない。し
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かし、その「違憲性が明白な場合」は、当然に違憲判断をすべきであるという
ことになる。そうでなければ、違憲立法審査権そのものの存在を否定してしま
うことになるからである。
そして、戦争への加担という違憲行為が明白になった本件においては、司法
自制論の立場に立っても、正にこの違憲立法審査権を行使しなければならない
のである。それこそが司法の任務であり、貴裁判所に課せられた使命なのであ
る。
五 また、裁判所の違憲判断を回避すべきという論拠として統治行為論が存在す
る。きわめて高度的な政治性を有するものについては裁判所の違憲判断になじ
まないというものである。
しかし、いかに政治部門の決定は高度な政治的判断によって決定されたもの
であっても、それは憲法に違反するものであってはならないのである。日本国
憲法は政治部門の決定を憲法の枠内に保つべき憲法保障機能の重要な部分を司
法部に委ねているのである。要するに政策決定は政治部門が行うが、それが憲
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法の枠をはみ出していないかどうかを裁判所がチェックするというのが日本国
憲法の三権分立制の基本構造なのである。
統治行為論によって決定的な判断を避けることは、それは要するに既成事実
をそのまま容認することを意味するから、政治的影響や政治的紛争に裁判所が
まき込まれるという点では、合憲の判断をした場合と結果は変わらないのであ
る。この種の政治的に重要な問題が、適法に裁判所に持ち込まれたならば、裁
判所が政治的紛争から身をかわす方法はないのである。このようなときにこそ、
「統治行為である」として違憲判断を避けるという「政治的判断」ではなく、
厳正・公正な憲法判断を下すことが、まさに裁判所の任務であり、また、裁判
所の中立性・独立性を確保することにもなるのである。政治的な対立があるか
らとか、合憲・違憲の判断をすると政治的影響が大きいからというような、そ
れ自体政治的な考慮によって、裁判所が違憲審査権を放棄するのは、かえって、
裁判所の政治的中立性を害する結果になるというべきである。統治行為論は、
厳正に憲法を適用するという違憲審査制のたてまえを、そしてまた、日本国憲
法の三権分立制の基本構造を、むしろ崩壊させかねない性格の議論であり、と
るべきではない。
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六 貴裁判所は、湾岸戦争の実態を曇りのない目でみてほしい。この湾岸戦争を
正義の戦争といいくるめて、国際貢献の美名の下に、九〇億ドルの戦費を支出
し、その結果イラクの民衆を約二〇万人虐殺し、多数の親を奪われた子どもを
作り出した事実。長期間はげしい空襲にさらされた多くの子どもや母親が、今
なお精神に異常をきたしているという事実。
日本国憲法は果たしてこのような戦争に加担することを許容しているのであ
ろうか。貴裁判所はこれを容認することができるであろうか。
七 昨年一〇月二一日の沖縄での県民集会で一人の女子高校生は、「静かな沖縄
を返して下さい、平和な戦争のない沖縄にして下さい」と発言したが、原告ら
の想いも同じである。原告らは被爆者であったり、戦争で親を失ったり、クリ
スチャン、主婦、学生、それぞれ立場や思想信条は異なるが憲法九条を本当に
大切なものとして自己の生きるよすがとして生きてきたものである。原告らの
この憲法擁護の熱い思いを正面から受けとめた判決を心から願うものである。
原告らは、人を殺したくない、殺されたくない、日本は平和な国であってほ
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しい、世界が平和であってほしいと願っているものであり、この想いは国民大
多数の願いでもある。
原告らはこの国民大多数の願いを国政の場で実現し、正義を回復するために
やむにやまれない気持ちから本件訴訟にふみきったものである。
八 裁判官に与えられた責任は誠に大である。しかし、それが故にこそ又、やり
甲斐のある職務でもある筈である。初代最高裁三淵長官は、在任中裁判官に当
てて次のように語っている。
「裁判官は法律の一隅にうづくまっていてはならず、眼界を広くし、視野を
遠くし、政治のあり方、社会の動き、世態の変遷、人心の向き様に深甚の注
意を払ってこれに応ずる識見と力量を広めなければなりません」と。
この言葉は現在にあっても、ますますその重要性をましている。
貴裁判所は、是非、憲法と良心にてらして悔いのない歴史の審判に耐えうる
判決を、勇気をもってなされるよう心から願うものである。
以 上
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