[市民平和訴訟の会・東京]証拠調べに関する意見書
(注)・原告の個人名は「*」で置き換えてあります。
平成三年(フ)第二六一一号 戦費支出差止等請求事件
平成三年(行ウ)第九○号 掃海部隊派遣差止等請求事件
平成四年(行ウ)第六号 平和的生存権侵害国家賠償請求事件
平成六年(ワ)第六三九号 平和的生存権便害園家賠償晴求事件
原 告 *****
外一○六六名
被 告 国
一九九四年五月一二日
右原告ら代理人代表
弁 護 士 加 藤 朔 郎
東京地方裁判所民事第二部御中
証拠調べに関する意見書
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原告らは、本件の証拠調べに関して次のとおり意見を述べる。
一 原告らは、一九九三年六月一四日付証拠申請書により合計二七名の人証の取
り調べを請求したところ、貴裁判所は第九回口頭弁論期日において証拠報べに
ついて合議した後に、裁判長より「この訴訟においては、論理的に前提になっ
ているのが平和的生存権であり納税者基本権であるから、まずここから証拠調
べを始める。その権利の存在が確認されれば、次に違法性を根拠づける事実に
ついての証拠調べに進む。そして違法の心証がとれれば、最後に損害に関する
証拠調べに進みたい」という趣旨の発言をされ、浦田賢治証人の尋問を採用さ
れ、浦田証人の尋問がなされた。次に北野証人が採用され、その証人尋問は本
年四月一八日に終了した。
ニ そして、貴裁判所は右期日において原告らが申晴している他の多くの証人の
採用を留保したまま、原告本人尋問を実施したい旨の意向を表明された。
原告らは、貴裁判所の前項記載の考え方は、本件訴訟の構造に適合しないも
のであると言わざるを得ない。
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浦田証人の証言においても触れられたように、本作は国家賠償法に基づく国
賠訴訟である。したがつて、論争点の中心は、あくまでも被告国の行為の違法
性の存否にある。
正に「釈迦に説法」ではあるが、「権利侵害」を要件とする旨明記されてい
る民法七○九条の解釈においても、これを「違法性」と読み替えるのが通説で
あり、定着した実務でもある。条文の文字どおりに「何々権」と名付けられた
権利の侵害がなければ不法行為が成立せず、損書賠償請求ができないという解
釈は、既に大正時代、大審院判例によって過去のものとなった極めて旧式の考
え方に過ぎない。
ましてや、国家賠償法第一条第一項は、損害賠償の要件を「公務員が、違法
に他人に損害を加えたとき」とし、ことさらに「権利侵害」という言葉を排除
している。
「平和的生存権、納税者基本権の裁判規範性の確立」は、国家賠償訴訟の要
件としては必すしも必要ではないということをご理解載きたい。
三 そこで、責裁判所が前記二名の証人の証人尋問を実施しても「平和的生存権
納税者基本権の裁判規範性」に確信をもてないと仮定しても、不法行為理論の
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通説である相関関係説からは、「侵害行為の態様」と「被侵害利益の性質」に
ついての証拠調べはニつながら必要となるのは当然である。
「裁判所の体制上の制約」から、当事者が請求する証拠のすべてを採用でき
ないという裁判所の立場は理解できるが、違法性に関する証人を採用しないま
ま、原告本人尋問を行うという貴裁判所の態度は、公平な裁判を受ける権利を
憲法上保障された民主主議国家の国民として、到底納得しがたい。
ここに改めて、「侵害行為の態様」の一端としての、湾岸戦争の実想、戦費
支出の経過、掃海部隊派遣に関する証人の採用を再考されるよう求める。
四 また、原告らが本件訴訟において問題としている被告国の行為は、湾岸戦争
の一方の当裏者であった多国籍軍に参加した各国に九○億ドルという巨額の戦
費を拠出し、ペルシャ湾に掃海部隊を派遣したことである。
湾岸戦争は、クェートに対して侵攻・侵略したイラクと、これに対抗しこれ
を排除するために、アメリカ軍を中心に結成された多国籍軍との間で戦われた
戦争である。
そして、多国籍軍の行動は国際連合安全保障理事会の決議に基づくものであ
るがゆえに我が国も協力するのが当然であるとされ、被告国は「国際貢献」と
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いう名の下に戦費拠出と掃海部隊派遣を行っている。
しかし、湾岸戦争時の多国箱軍の行動は、国際連合憲章第七章に基づいた軍
車措置でないことは明らかである。そして、多国籍軍の現実の戦闘行為は確立
した国際法規に明白に違反したものである疑いが極めて濃厚である。
日本国憲法は、恒久平和主義を基本原理とし、第九条において戦争放棄を定
めるとともに、第九八条第二項では「日本国が締結した条約及び確立された国
際法規は、これを誠実に尊守することを必要とする」としている。
湾岸戦争に際して我が国政府が「国際貢献」をロ実として行った戦費の拠出、
掃海部隊派遣という行為の違法性を判断するうえにおいて、湾岸戦争がいかな
る経過で発生し、国連安保理決議がどのようにして成立し上のか、多国籍軍の
軍事行動、戦闘行動は国際法上どのように評価されるのかが明らかにされる必
要がある。
違法性の判断は、明文の法規あるいは不文法に該当したか否がを判断すれば
足りるというものではなく、全体の法規編秩序との関連で判断しなければなら
ない。
本件においては、国際紛争を解決する手段としての湾岸戦争に、我が国が戦
費を拠出し、掃海部隊を派遺したことの当否が間われているのであるから、湾
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岸戦争が国際法上いかなる評価を受けるか、多国籍軍が戦争という手段を行使
するに至った経過、戦争以外に取り得る手段は全くなかったのかなどについて
専門家の証言を求めることは不可欠であり、それなくして正しい判断は下せな
いと考える。
五 よつて、原告らは第一項記載の証拠申請書の人証番号二四番最上敏樹証人、
同二六番浅井元文証人を是非とも採用されるよう求める。
また、被告国はペルシャ湾に掃海部隊を派遺した理由につき、「我が国船舶
の航行の安全を確保する目的」と主張している。しかしながら、掃海部隊が機
雷除去の作業を行った時期に、ペルシャ湾内奥海域及びイラク領海内には我が
国船舶の航路は存在しながったのであり、したがって掃海部隊を派遣する必要
性はなかったことを立証するため、同一○番橋本春彦証人の尋問を求める。
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